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少年が恐怖に身を固めている間も色々と考えていた少女は、やがて一つの決意を固めた。
「ルイン……悪いけど、ここからは一人で逃げて」
「え……?」
少年が顔を上げ、視線を目の前の少女に送った。その眼には強い決意の炎が宿り、とても冗談を言っているようには見えない。
「いい?あたしが時間を稼ぐから、まず街の外まで逃げて、それから安全なところに避難して。何度も言うけど、絶対死んじゃいけないからね」
その声は強い思いを秘めていることを思わせたが、少し震えていた。
だが、“それ”の包囲網も徐々に狭まっている。迷っている暇はない。
少女は少年が何か言う前にその肩に手を添え、向かい合う状態から回れ右をさせた。そして、背中をぽんと叩いて一言加える。
「くれぐれも、途中で立ち止まったり振り返ったりしないで。あたしの心配よりも、自分の身を守ることを考えなさい。わかった?」
「……う、うん……」
勢いにされるようにポツリと答えた少年が、一言だけ言った。
「レクイア……死なないでね、約束だからね!」
「…………もちろんよ」
ようやくまともな言葉を発した少年。だが、その言葉への返事をした少女は既に少年から見て背面になっていて、その表情は分からなかった。
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