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彼は私を突き落とした。
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ごぼり
「あ?」
不自然な泡の湧き方に思わず間抜けな声を落とした。
それきり静かな水面、白い髪をわしゃっとかいて見間違いかと首を捻る。
「どうした?」
右目を隠す青年が、左目を隠す青年に問う。
早く指せとせっつく手には次に使うつもりなのだろう歩の駒が握られている。
ああ、と言葉を濁して元親は右目の視線をもう一度内庭へ飛ばす。
「水面が不自然に動いたからよ」
「鯉が跳ねたんだろ」
「いや魚の動きじゃねえな」
「Han?」
海と魚に関しては確かに俺より詳しいが。
そう政宗が左目で庭を見やった時だ。
ごぼ、り。
大きな気泡が水面を揺らした。
ごぼ、ごぼ。
と、今度は連続して続くそれに明らかな違和感を覚えた二人は駒を刀に持ちかえ庭へ降り立つ。
揺れる水面。
ゆらめく影。
果して水底から浮かび上がってきたものは。
肌を青白く染めた、子どもだった。
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