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いや、子供ではなかった。
敵ではないと暫定的に判断を下され、布団の中で未だ意識を取り戻さないそれを見て思う。
顔が小さいからか子供だと見たが、掬い上げた時に感じた手足は伸びていた。
印象として華奢さは付きまとうが決して不健康なものではない。
こうして布団から顔だけを出していると14,5にも見えるが、手足の伸びからすると、頃にして17,8だろうか。
「死んでんじゃねえだろうな」
あまりに静かな息に元親が手を口へかざす。
息はどうやらあったようで、すっと手が戻される。
「安定はしてるな」
「どう見る?」
「ただ溺れただけなら今日明日には起きるだろ」
「No. そうじゃねぇ」
ようやく思った場所へ歩を置いて、脇息の隣の煙管を取る。
胡坐をかいてしかめ面で盤を見る元親の、つむじに向かって煙を吐いた。
「あれは伊達のもんじゃねぇ。敵にしてはおかしい」
「あー、そっちか」
しかめ面が煙そうにより強められ、ぱちん、と置き換えられた駒が鳴る。
「あれは長曽我部のもんでもないぜ。白いし、こっちのもんじゃねえのか」
「お前だって白いだろうが」
「オレは特別だっつったろ?」
トンと左目の覆う紫を示すと、そうだったなと政宗は頷く。
もう一息、腑に沁み渡らせるように煙を吸う。
ふう。
寝顔に向けて吐いても、煙がる反応はない。
「……」
病人になにしてんだよという視線を隠した右目に感じたが、それを飄々と受け流して駒を取る。
「まあ起きるまでは保留と行こうぜ。こうるさい小十郎もいねぇんだ」
もう一戦するんだろ?
控えめに置かれた駒は、王手。
今度こそ鯉が、水面を揺らしてパシャンと鳴った。
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