午後4時30分

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戦慄、鳥肌、恐怖。 ある意味三種の神器。 俺は脅えながら、その子の瞳から逃れるように職員室へ全力で走る。 怖かった、なんだかあの目がひどくひどく怖かったのだ。 無我夢中で職員室へたどり着き、思い切りドアを開け飛び込む。 「すみません、玄関が開かない…」 んですけど、と言おうとした言葉は、消えた。 …居るはずの先生、あるはずの机、あるはずの、窓。 全て全て、消えていた。 錯覚か、夢か。 俺は何度も自分の頬をつねり、瞼を擦る。 だが、クリアになる視界はまるで変わらなかった。 何度擦ろうと、無いものは無い。 「うそだろ…」 俺は文字通り頭を抱え、膝を落とした。 床に思い切り落ちたせいで膝が激痛を覚えるが、最早どうだっていい。 出れない、なぜ。 これはなぜだ。 そればかりが頭の中を過ぎる。 「もう始まったの」 背後で、あの声が聞こえた。 「あなたは参加者だよ」 淡々とした声に、俺は縋るように話しかけた。 自分の声が震えているのもわからないほどに。 「なにがだよ…!俺はなんの参加者なんだよ、帰してくれよ…」 この調子では、きっと他の出入り口もそうなのだ。 そういったことだけが、冷静に判断できる自分がばからしくて思わず笑みを浮かべる。 しかしその子はやっぱりそんな俺など興味が無いらしい。 だが、俺を心配しているのか俺を使おうとしているのかわからないが、座り込む俺の隣に静かに腰を下ろす。 「もうすぐ、放送があるから。よくそれを聞いてね」 「放送…?」 その直後、彼女が言ったとおり放送のチャイムが流れた。 ひどく、間抜けに聞こえた。
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