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その日は朝から穏やかな晴れ間が広がっていた。
生命の息吹きが聞こえ始める季節。
ここ、都内の某一級河川の河川敷でも草花が一面を鮮やかな緑色で覆っていた。
暖かな日の光に照らされるそれは、春の訪れを知らせる心地良い風にその身を踊らせている。
そんな春の風景の中に、新緑の絨毯に腰を下ろし、悠久の流れを刻む川を眺めている一人の男の姿があった。
どれくらいそうしているのだろう。その男は何をするでも無く、ただただ座しているだけである。
するとそのうち一人の男が彼に近付いて来た。
「すまん赤岩、ちょっと遅くなった!」
近付いて来た男が声を掛けると、赤岩と呼ばれた男はそちらを振り向いた。
「おう、青山!わざわざ呼び出してすまなかったな?」
そう言うと赤岩は立ち上がり笑顔を見せた。
どうやら待ち合わせをしていたようだ。
「まあ、とりあえず座れよ。」
そう言って赤岩が再び腰を下ろすと、青山も赤岩の隣に座り込んだ。
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