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物心がついた頃から真人にとって、『貴人』は尊敬出来る唯一の存在(あいて)だった。
それは今も昔も変わらないまま…
忙しい両親に代わり、何でも熟す8つ離れた貴人が自分の全てになるのに、そう長い時間は掛からなかった。
そして、貴人の進路(あと)を追い掛ける充分な『理由』になり、その兄がいま自分を求めている。
例え、それが気まぐれだったとしても…
それ以上の抵抗の言葉を失った真人の唇に、薄く緩んだ貴人の唇がゆっくりと重なる。
「一生懸命、私の背中(あと)を追い掛けてくるお前を可愛いと思わなかった日はないよ…」
その言葉に、今にも込み上げて来そうな歓喜を堪え、真人は精一杯、気のない素振りを見せた。
「ふん、何を言い出すかと思えば…」
皮肉染みた憎まれ口を叩きながら、真人は貴人の首筋に指を這わせていく。
「でも…まぁ、良い。気まぐれでも何でも。俺も気が変わった。付き合ってやるよ。どうせ退屈してたしな…勿論、愉しませてくれるんだろう?」
そう言うと、真人は挑発的な眼差しで貴人を見詰めた。
‐END‐
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