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手を伸ばしても、届かないと思っていた。
どんなに想い、恋い焦がれたとしても…
「…っ、んっ…いった…」
汗ばむ躯(はだ)を重ね合わせ、目の前の『男』を見上げる。
「…真人、もっと力を抜け。」
良いと思った。
「む…無理…あっ、貴…人…」
貴人になら、俺の全てを…
例え、自分の命をくれてやっても惜しくない…
「真…人…」
そう俺に思わせた、唯一の…
小さな頃から、俺を夢中にさせ続けた貴人(あに)。
医者の息子として…
またその長男として、両親や俺の期待を裏切る事なく、応え続けてきた尊敬する人。
ものごころがついた頃から今でも、人の一歩先を歩き、この人の右に出る者は誰一人いない。
嫌と言う程、幼い頃からその才能を周りに見せ付けた、俺の自慢の…
「う…っ…」
予想以上の痛みに、目の前に星が飛ぶ。
苦しい…
吹き出た汗が、雫になって頬を滑り落ちていく。
「や…優しくなんか…しなくて良い…もっと…」
貴人は、どう言うつもりで俺に声を掛けたんだろう?
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