【貴人×真人:妄想②】

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  手を伸ばしても、届かないと思っていた。 どんなに想い、恋い焦がれたとしても… 「…っ、んっ…いった…」 汗ばむ躯(はだ)を重ね合わせ、目の前の『男』を見上げる。 「…真人、もっと力を抜け。」 良いと思った。 「む…無理…あっ、貴…人…」 貴人になら、俺の全てを… 例え、自分の命をくれてやっても惜しくない… 「真…人…」 そう俺に思わせた、唯一の… 小さな頃から、俺を夢中にさせ続けた貴人(あに)。 医者の息子として… またその長男として、両親や俺の期待を裏切る事なく、応え続けてきた尊敬する人。 ものごころがついた頃から今でも、人の一歩先を歩き、この人の右に出る者は誰一人いない。 嫌と言う程、幼い頃からその才能を周りに見せ付けた、俺の自慢の… 「う…っ…」 予想以上の痛みに、目の前に星が飛ぶ。 苦しい… 吹き出た汗が、雫になって頬を滑り落ちていく。 「や…優しくなんか…しなくて良い…もっと…」 貴人は、どう言うつもりで俺に声を掛けたんだろう?  
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