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家に着くと、部屋の温度を囲炉裏の灰を調整して上げた。思いのほか発見が早かったのか、赤子は何とか泣き止むと安心し…彼の腕の中でスヤスヤと安らかに眠りに付いた。
「…さて連れてきたのは良いが…この後どうしたものか」
冷静に男は呼吸を整えると、脳に酸素が周り出すと兎に角…診療所へ連絡するために受話器に手を伸ばした。
「…頼む出てくれ」暫く呼び出し音を繰り返して待つ間男の心臓は更にバクバクと鳴り響いた。
「倉橋診療所です…あぁ椿先生どうされたと?」
女性看護士の浪子さんがいつもの落ち着いた声で出ると、慌てた様にせき立てる様き切り出した。
「浪子さんですか?驚かんと聞いて下さい…」
「どうしたと…倉橋先生に代わりましょか?」
「先ず浪子さんに聞いて欲しいと…赤子をさっき見つけたとです」
「はぁ?赤子…椿先生とが?」
「倉橋先生に代わるとばい…待っとってなぁ…」
暫く受話器越で何かやり取りする声が遠くに聞こえると、次の瞬間男の声に変わった。
「椿先生…今晩は…倉橋です赤ん坊を見つけたとか…」
「そうとです…さっき雪の中…正確には大木の洞穴の中ばい」
「赤ちゃんの状態は如何ですか?」
「今は泣き止んでるとです…眠って大人しい…」
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