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「今から往診に向かいます…何か必要な物は有りませんか?」
「赤ん坊のミルクとか…後おしめとか…産着が全く無いばってん出来れば…」
「はいはい…椿先生はお一人でしたよね…任せて下さい。浪子さんにお願いして色々揃えて直ぐに向かいます」
「…待っとるばい…先生頼んます」
そこで受話器を置くと安堵したのかその場にへなへなと力抜けて座り込んだ。
「はぁ…この赤ん坊…名前付けんとな…男の子か?女の子か?」
スヤスヤ眠る顔を覗き込み…指の腹で軽く触るとクシクシともぞもぞ動いて大きな欠伸をして瞼をピクピク動かしました。
この家に一人暮らしをするこの男の名は…椿公明(つばきこうめい)まるで作家か水墨画家のような名前だが、実は風水を生業にしている男である。
御年…四十歳。自然を愛し、風水を自分の転職にしたのが15歳の時…まだ年端も行かぬ若僧だった。
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