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ヴァーツラフたちが城から脱出して幾ばくかの時間が経った。休むのに丁度良さそうな大岩を見つけ、その陰にもたれ掛かるようにしてヴァーツラフは眠っていた。
すでに星が煌めき始めた夜空が、ヴァーツラフとその傍らで寄り添うように眠る少女を見下ろす。
ギャリングの殺気は確実に近付いているようだ。あの不気味な気配は二度と忘れない。決戦は近い。
(………クソッタレが)
真夜中にヴァーツラフは目を覚ました。今日一日の出来事を反芻して、自分の弱さに嫌気がさす。
悪魔……おとぎ話とばかり思っていた存在が、現存した。しかも、物語通りの強力な力を有して。だが、ヴァーツラフは確信していた。
(あの時……あの野郎の腕を確かに切り落とした。なら、剣が効くってことだ)
岩壁に立て掛けた大剣を掴み、立ち上がる。鞘から解き放たれた刀身に、満月が映り込む。
(次で最後だ。ケリを付けてやる)
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