*$prologue$*

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強大な帝国との戦争で荒れ果てた城下街。 戦争が始まるまで毎朝開かれていた賑【ニギ】やかな市場は、今ではもう開かれていない。 王国に立ち並ぶ店は、武器や防具の店ばかりで、今の戦況を強調している。 きらびやかな硝子【ガラス】細工を売る行商【ギョウショウ】人達は、 戦争に巻き込まれるのを怖【オソ】れ、いまでは誰も王国を訪れようとはしない。 道端【ミチバタ】てお喋【シャベ】りする人の姿や、子供達が楽しそうに騒いで駆け回る姿は、今では何処にも見られない。 王国の誰もが、終わりの見えない戦争に苛立【イラダ】ち、不安や不満を漏らし出していた。 そんなある日の早朝、この廃れた城下街に騒がしい叫び声が響き渡った。 「大変だ大変だぁ!!!!」 1人の男が廃【スタ】れた街中を駆け抜けて行く。 家々【イエイエ】からは窓から顔だけ出して、騒ぎ立てる男を眠そうに見つめた。 男は街中を駆け回ると、城下街の中心にある広場に来た。 広場には男に起こされた城下街の人々が集まっていた。 男は広場の中心に向かい、人々は男に不機嫌そうに声を掛けた。 「こんな朝っぱらからなんなのさ」 「大したことじゃなかったらしょうちしねぇぞ」 男は人々の言葉に何も返さず、黙って広場の中心まで行くと、 そこにある、今はもう動かない噴水の上によじ登り、広場を見渡した。
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