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「え、だってめんどくさいじゃん。それに私に合ってないし」
夏美がスラッと答えると、愛子はガクッと転ける。夏美のこの考え方には毎回悩まされていたのだ。いつも連れ歩く親友として、街へ出掛けるときの周りからの視線が痛くて仕方ない。
だからと言って、夏美を捨てたりはしないがせめて恥ずかしい思いをしないような格好をしてほしいと願っているのは誰よりも愛子だった。
「因みに聞くけど、夏美のそのセンス誰からもらったって?」
「それ、前も聞かなかった?ひいお婆ちゃんにだよ」
夏美はひいお婆さんと同居している。親は別に死んだわけでもない。ただ、忙しいだけで世話をする暇が無かったためにひいお婆ちゃんに夏美を預けているのだ。
小学生の頃から同居していた上にあの性格の為、彼女はセンスを完全にズラしてしまったのだ。
「あんたねぇ‥ちょっとは周りの子を見習いなよ。例えばA組の山本美奈とかさ?」
「あ、でも彼女最近学校一の地味男と連んでるって噂あるよ?」
「情報が一番遅いあんたがその事を知ってるのにはちょっと驚いたよ」
「うるさい」
言い合いを続けて疲れたのか、今度は愛子が肘をつく。夏美はその様子をただただ観察しながら、考え込んでいた。
「にしても、不思議なことってあるんだねぇ」
愛子がそう言うと、夏美が愛子を見た。
「どうして?」
「だってさ、可愛さ抜群の山本美奈があの地味男とだよ?絶対裏に何かありそうだよ。脅してるとか」
「そんなこと言っちゃダメだよ。誰がどう交友関係を持とうと、私たちには関係ないじゃんか」
「そりゃあそうだけどさぁぁ‥」
そう言い終わったら今度は愛子が机にうつ伏せになる。その仕草をみながら、ぼーっとしていたら、夏美はふと何かを思い出した。
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