第一話:悪夢、降臨

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「…許さない…!」 フェイトは命を『何事にも変えることの出来ない大切なもの』と考えている。 だから、命を簡単に奪う目の前のそれがどうしようもなく許せなかった。 標的を逃げる陸士から上空のフェイトへと変えたチュパカブラドールマターが口から再びチューブを発射する。しかし、フェイトもだてに何年も執務官をやってきたわけではない。素早く身を翻してかわす。 「バルディッシュ!」 『Haken form』 フェイトの相棒のデバイス、バルディッシュ・アサルトをハーケンフォームへと変形させ、黄色に輝く刃を展開する。 「はああああ!!」 空中よりほとんど落下に近い速度で下方へ飛び、バルディッシュの刃をチュパカブラドールマターへと叩きつける。 『ガッ!』 重い一撃に、チュパカブラドールマターの足元が僅かにぐらつく。しかし、それでも装甲の破壊までには至らなかった。 それだけではない。 「っ!?」 打ち込んだ瞬間、フェイトは身体から何かが抜け落ちるのを感じた。それと同時に感じるのは、急激な疲労感と胸を締め付けるような痛み。 『ガアア!』 「その隙を逃すはずもなく、チュパカブラドールマターがその鋭利な爪を振りかざした。 「くっ!」 かろうじてバルディッシュで受け止めるフェイト。しかし、勢いに負けて身体が弾き飛ばされてしまう。 「ああ!」 素早く旋回して、体制を立て直すフェイト。しかし、その顔は先程よりも疲労の色が濃くなっている。 (やっぱり、あの怪物は当たったものから魔力を吸収するんだ) フェイトが感じた疲労感の正体。それは身体の中にある魔力が減少したためだった。 一般的に魔道士は、空気中にある魔力素を不可視器官、リンカーコアに取り込み、それをもとに魔力を形成、魔法を行使する。 しかし、大量の魔力素を取り込むのには時間がかかり、それだけ待たなければならない。 だが、魔力はある程度身体の中に溜め込むことが可能で、基本的には溜め込んだ魔力を使って魔法を使う。 そして、内蔵魔力が減った時に、疲労を感じるようになっているのだ。
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