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フェイトは本来、ほんの数分ばかしの戦闘で息を切らすほどの魔道士ではない。むしろ、他の一般的な魔道士よりも圧倒的に長時間戦える、エース級の実力と内蔵魔力量をほこっていた。
そのフェイトですら疲労させたのだから、それだけ怪物(チュパカブラドールマター)が吸い取る魔力量は凄まじいものなのだろう。
おまけにあの硬い装甲だ。なのはほどの一点集中破壊の攻撃力がないフェイトが破るのは相当難しいだろう。
「どうすれば…」
悔しいがここは進行を食い止めるぐらいにして素直に応援を待つか。
そんなことを考えだした時だった。
「どいていろテスタロッサ」
フェイトよりも更に上空からの声。
「え…?」
「紫電…」
その声の主と言葉の意味に気がついた瞬間、フェイトは素早くその場から離れた。
代わりに下へ飛び出したのは、長い髪をポニーテールにした女性。
「一閃!」
手にした刀剣型デバイスに魔力を込め、その気になれば岩をも切断できるであろう威力でチュパカブラドールマターへと切り込んだ。
『ガッ…グ…』
質量ある刃による攻撃。これほど簡単で、かつ高威力の攻撃はないだろう。
あまりの衝撃に、チュパカブラドールマターも数歩分後ずさりをした。
対して女性は、刃の勢いが止まると同時に空へと舞い上がり、フェイトと同じ高さまで達した。
「シグナム!」
フェイトは女性―ライトニング02、シグナムへと話し掛けた。
「ずいぶんといきなりだったんで、驚きました」
「済まないな。どうも、念話がうまく繋がらなくてな。こんなタイミングになってしまった」
「そうみたい…ですね」
念話が通じない。このことはフェイトも薄々は感じていた。
最初に陸士達へと連絡しようとしたが、いつまで待っても返事は返ってこなかった。しかし、その時は緊急状態ということもあり、あまり疑問には思わなかったのだが。
「あの化け物が原因なのか、それとも別の何かがあるのかは分からんが…とりあえずはあれの始末が先だ」
「…はい」
「高町もすぐ来る。いくぞ!」
「はい!」
シグナムの活と同時に、二人はチュパカブラドールマターへと切りかかった。
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