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なのはが現場に到着した時、対峙する異形の姿を見て、思わず「うっ」と言ってしまった。
あまりにおぞましい。報告こそ受けていたが、やはり報告と実際に見たとでは明らかに違う。
ここ数年は教導官としてあまり前線に出ることなくなったなのはにとっては、久しぶりの未知との遭遇とも言えた。
ガジェットは兵器でこそあるものの、四年前に見て以来、ちょくちょく資料などでも見ていたし、よく見るとそれなりに可愛げのある造形だった。ナンバーズに至っては、生まれ方や体の構造がちょっと違うだけの人間だ。
それらに比べると、今回の敵はあまりに醜悪だった。
とはいえ、敵に関して好き嫌いなど言っていられず、すぐになのはは様子見としてアクセルシューターを一発、チュパカブラドールマターへと発射した。
『ガッ!?』
突然の遠距離攻撃にチュパカブラドールマターも焦ったようで、アクセルシューターは見事命中した。
しかし、やはりシグナムの紫電一閃を傷一つなく耐え抜いただけのことはあり、ほとんど効いていないようだ。
「なのは!」
フェイトがこちらへと向かってきた。その表情は、安心半分心配半分、ようは複雑そうな顔だった。
「なのは、大丈夫?」
「大丈夫だよ、フェイトちゃん。なんでそんなに心配するのかなあ?」
「だってなのは、まだあの時の後遺症が…」
JS事件。
次元世界を恐怖させ、一時は再び旧暦の惨事を繰り返しかけさせた最悪の大事件。
そして、その鍵たる者、聖王。
なのははその聖王―現在のなのはの義理の娘、ヴィヴィオ―と戦い、勝利した。
しかし、その代償は大きく、本当ならば後最低数ヶ月は絶対安静が必要なほど体を外部内部両面が傷ついている。
しかし、今なのははここにいる。体の無茶を押し通して。
本人は大丈夫だと言ってはいるが、恐らく以前ほどの無茶は絶対出来ないだろう。いや、してほしくない。
「うふふ、フェイトちゃんは心配性だね」
「違っ…」
「でも、心配はいらないよ。だって…」
わたしには、みんながいるから。
「みんなが支えてくれるから、わたしは立っていられる。みんながいるから、諦めずに進める。だから、心配しないで」
その時、フェイトは気づいた。
本当はなのはが無茶をしてるんじゃなくて、自分がなのはに無茶をさせているんだと。
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