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どうして気がつかなかったのだろうか。
なのはが無茶をするのは、いつも誰かのためだ。
十年前、自分の全力を耐え抜いて戦ったくれたのは、友達になりたいだけじゃなくて、友達というものを自分に教えたかったからだ。
昔のなのはがよく言っていた言葉、「お話しよう」は、人は話し合い、分かり合えることを知らせたいからだ。
そして今ここにいるのは、これ以上誰かに犠牲になってもらいたくないからだ。
いつもそうだ。
自分のことなんか考えもせずに、ひたすら人のためにがんばってきた。
それがなのはだ。
そして恐らく、そんな自分が定めた道に、本人は気づいていない。
自分の応援としてきてくれたなのは。
しかし、自分がもっと強ければ、出動させずにすんだのではないか?
もちろん、部隊特有の能力限定の前では、それは無茶な話だ。
だが悔しかった。
万全でないなのはを出動させたことが。
許せなかったのだ。
それを自覚しつつも、結局なのはに助けてもらうしかない自分が。
なんで…なんで…
自分はなのはから離れられないのだろう。
なんで…
「フェイトちゃん!」
「テスタロッサ!」
「!?」
我にかえった時、目の前にあったのはあの怪物の触手だった。
「くっ!」
間一髪、バルディッシュで受け流すことに成功するフェイト。しかし、完全弾き返すことはできず、バリアジャケットのマントの端が切り裂かれた。
「何をしているテスタロッサ!お前らしくもない!」
「ご、ごめんなさいシグナム…」
「…まあいい。次が来るぞ」
シグナムがそう言ったわずか数瞬後、怪物が触手を鞭のように操りこちらに繰り出してきた。
しかし、先ほどのフェイトのように無防備だったならともかく、しっかりとかまえた彼女たちにとってこの程度の攻撃を避けることなど容易いことだ。旋回してかわし、素早く体制を立て直す。
「今度はこっちからいくよ!」
なのははそう言うやいなや、相棒レイジングハートをバスターモードへと変える。
「ディバイィィィン…」
触手が攻撃を阻止しようと勢いよく放たれるが、途中でフェイトによって弾かれる。
なのはの十八番である砲撃魔法、ディバインバスター。それが今まさに放たれようとしていた。
しかし、
「…え…?」
運命は、それを許さなかった。
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