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彼女たちの敗因は二つ。
一つ目が、相手の知能をあまり高くないと見ていたこと。
ほとんど本能的な行動をしていたため、いつの間にか彼女たちの脳内は「知能レベルは高くない」と判断していたのだ。いや、そう思わせるのもチュパカブラドールマターの作戦の内だったのかもしれない。
二つ目がチュパカブラドールマターの触手を一本だけだと思ってしまっていたこと。
三対一になってもそれ以外に出さなかったために、知らず知らずのうちに先入観でそうすり込まれていたのだ。
だからなのだろう。
なのはの腹部を、チュパカブラドールマターの日本目の触手が貫いていたのは。
スバル・ナカジマには憧れの人物がいる。
高町なのは。
四年前の空港火災の時、まだ幼かった自分を助け出してくれた人。
その時の彼女を見て、自分も管理局員になろうと思った。
それからずっと、彼女の見えない背中を追って進んできた。
同じ部隊に、機動六課に誘われた時はどんなに喜んだだろう。
時々つらいことや悲しいことはあったけれど、この八ヶ月は決して忘れないだろう。
そして今日、空を飛んでの後ろ姿は、とてもきれいだった。
ならば、何故
何故今彼女の後ろ姿は、赤く染まっているのだろうか。
「あ…」
瞬間、理解する。
「ああ…」
それは、血。
人に流れるもの、生き物に流れるもの。
「あああ…」
それはつまり、
高町なのはの敗北だった。
「うわあああああああああああああああああああ!!」
スバルの叫びと頬をつたう涙、そしてその目がエメラルドから琥珀色に変わるのは同時だった。
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