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「そんな…なのはさん…」
鋭く尖った触手によって腹を貫かれたなのはをみながら、ティアナはただ呆然と立ち尽くすばかりだった。
なのはのバリアジャケットは自分たちのそれよりもかなり堅く作られている。生半可な攻撃では破られることはない(もっとも、強い衝撃などは通してしまう場合もあるが)。
そのなのはのバリアジャケットを貫通するほどだ。かなりの破壊力を持っているに違いない。
なぜか触手は血を吸わず、そのままなのはの腹から抜き取られる。ズルリという肉のこすれる音と共に、ポタポタと赤い液体が滴る。
「くっ…」
なのはは最後の力を振り絞り、地面へ着地しようとする。しかし、それもかなわず上空3メートルほどのところで力尽き、落下してしまった。
同時にバリアジャケットも解除され、今度はバリアジャケットと同じく白い教導官服が赤く血で染まり始めた。
「なのはさん!?」
慌ててフリードから飛び降りるティアナとキャロ、そしてエリオがなのはのもとへと駆け寄った。
「酷い傷…ヘタしたら内蔵もやられてるかも…」
そう言うティアナだったが、実際のところはそれだけでは済まないと予想していた。だが、まだ幼いエリオとキャロがなるべく傷つかないよう、ティアナなりに言葉を選んだのだ。
「キャロ、あんたはここでなのはさんの傷の治療お願い」
「えっ、でもこんな酷い怪我私じゃ…」
「とにかく!応急措置だけでもいいから早くするの!」
「は、はい!」
ティアナに言われた通り、キャロはなのはに治療魔法をかけ始める。しかし、キャロができるのは簡単なヒーリングがせいぜいである。
(まずいわね。念話も使えないし、今はなのはさんの治療が最優先事項…)
ティアナは今できること、しなければならないことを必死に頭の中で整理していた。
見ればシグナムはすでに敵討ちと言わんばかりに身構えている。それでも飛び込まないのは、有効打が思いつかないからだろうか。
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