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「攻撃が効いている…だと…!」
スバルとチュパカブラドールマターの闘いを見下ろしながら、シグナムは少々驚愕していた。
無理もない。先程まで自分とフェイトの二人がかりで相手をしていたというのに、目立ったダメージを与えられなかったのだ。
それを、確かに優秀だがそれでもまだ負ける気はしなかったスバルがあれほどまで善戦しているのだから。
「もしや…あれは魔力を少しでも含まれた攻撃は効かぬとゆうのか…?」
可能性としては十分にありうる。
例えばAMFだ。あれは魔力を霧散させたり、乱したりする効果を持つ。
それを体表面にのみ高濃度でまとう事によって魔力を用いた攻撃を無効化しているのではないか、というのがシグナムの仮説である。
「…いや、おそらく違うだろうな。説明出来ないことが多すぎる」
例えば、奴が現れてからおこっている、念話の不可能状態だ。AMFにはそんな効果はないし、仮にあったとしても今までガジェットと戦った時に気付くはずだ。
「どちらにせよ、現状では決めかねるな。テスタロッサ、お前はどう思う?」
考えるのを止め、シグナムはフェイトに話し掛けた。
(高町が傷ついて大分ショックを受けているだろうしな。こうでもして気を紛らわしてくれればいいが…)
しかし、フェイトからは返事はない。
「…テスタロッサ…?」
おかしいと思い、シグナムはフェイトの方へと振り向く。
フェイトは先程と同じ場所にいた。しかし、その目には光が宿っていない。
「なっ!テスタロッサ!」
慌ててフェイトへと近づき、何度も揺さぶるシグナム。だが、
「…なのは……な…のは…」
「…くっ、駄目か。ショックで気を失っているに近い状態だな。このままにはしておけん」
シグナムはフェイトの身体を抱きかかえると、近場のビルまで連れて行き、その場にそっと寝かせた。
『…Thank you』
ぼそりと、バルディッシュが感謝を述べる。
「何、大丈夫だ。それより…」
再び、戦闘の方へと目を向け、その後、なのはとキャロの方を見る。
なのはの出血はかなり酷い。バリアジャケットで多少なりとも勢いを緩和しなければとっくに死んでいただろう。
幸い、キャロの治療魔法のお陰で傷も少しは塞がり始めているようだ。
「だが、正規の治療を受けられるまで高町が保つかどうか…」
シグナムは心の中で、珍しくも神へと祈りを捧げた。
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