第10章 里奈

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「ママ、ママ!!」  里奈は母親に縋り付く。  だけど、静はまるで里奈には気付かない。里奈な叫び声にも振り返ることなくどこかに消えていってしまう。  和人が知らない人と遊んでいる。  こんなの嫌!!    こっちへおいで。ほらっ。楽しいよ。  どこからか声が響いてくる。 「誰? あたしのことわかるの?」  里奈は振り返った。  あたしのことわかるの?  誰も気付いてくれなかった。  母親も和人も誰も里奈のことに気付いくれなかった。  里奈は声のするほうに歩き出した。声が誘うように降り注いでくる。  あっ、見たことある。  キラキラと光るダンスフロアに入り、里奈は考える。  いつだったかな。どこかで里奈はこの景色を見たことがある。  どこでだったかは思い出せないけれど。  ほっとした気分で里奈は足を踏み入れる。 その時だけ里奈は、寂しさから逃れることが出来た。
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