第10章 里奈

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里奈は明かりを求めて、優しい声に触れたくて、話し声の聞こえてくる部屋に近づいて行った。 そっとドアに触れると、ゆっくりと吸い込まれるようにして、里奈は部屋の中に入ることができた。 「やだっ! 何っ!! 今、何かが後ろを横切ったわっ」 「何なのっ、これっ! 気持ち悪い」 里奈が近づくと、すぐに女性が悲鳴をあげた。 その後も、女性はヒステリックに叫び続け、ついには男性が、 「うるさいっ」 と怒鳴り始める。 里奈はすぐに部屋を飛び出した。 里奈が近づくと、何時もこうなるのだ。 今まで、優しかった人々が、すぐに悲鳴をあげパニックになり騒ぎ始める。 それからは、罵り合いや喧嘩となり、里奈は逃げ出すしかなくなるのだ。 寂しい…、寂しいよ、ママ。 里奈はどこに行けばいいの? どこに行けば安心できるの? ママは和人のことばっかり…。 里奈のことは振り向いてもくれない。 仕方なく、里奈は暗闇に紛れてただ息を殺して、身を潜めているしかない。 助けて、助けて!! この暗闇から、里奈を助け出して!! ママの嘘つき。 「大丈夫だよ」って言ったのに。 里奈は全然大丈夫なんかじゃないよ。
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