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里奈は明かりを求めて、優しい声に触れたくて、話し声の聞こえてくる部屋に近づいて行った。
そっとドアに触れると、ゆっくりと吸い込まれるようにして、里奈は部屋の中に入ることができた。
「やだっ! 何っ!! 今、何かが後ろを横切ったわっ」 「何なのっ、これっ!
気持ち悪い」
里奈が近づくと、すぐに女性が悲鳴をあげた。
その後も、女性はヒステリックに叫び続け、ついには男性が、
「うるさいっ」
と怒鳴り始める。
里奈はすぐに部屋を飛び出した。
里奈が近づくと、何時もこうなるのだ。
今まで、優しかった人々が、すぐに悲鳴をあげパニックになり騒ぎ始める。
それからは、罵り合いや喧嘩となり、里奈は逃げ出すしかなくなるのだ。
寂しい…、寂しいよ、ママ。
里奈はどこに行けばいいの?
どこに行けば安心できるの?
ママは和人のことばっかり…。
里奈のことは振り向いてもくれない。
仕方なく、里奈は暗闇に紛れてただ息を殺して、身を潜めているしかない。
助けて、助けて!!
この暗闇から、里奈を助け出して!!
ママの嘘つき。
「大丈夫だよ」って言ったのに。
里奈は全然大丈夫なんかじゃないよ。
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