第9章 呪いの屋敷

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「行こう」   綾菜に手を引かれ、真綿は一歩を歩き出した。  心がうきうき踊るような楽しみが湧いてくる。 「うん」  綾菜に頷きかえして、二人は顔を見合わせて微笑む。  真綿は夢心地でダンスフロアへと向かう。  きらびやかな光りに囲まれた自分。  まるでドラマの主人公のようだ。 「お姉ちゃん、いっちゃ駄目」  綾菜と手を繋いだ反対側の手に、滑り込んでくる小さな手の感触がして、真綿は振り返った。  小さな手が真綿に延びている。 「お姉ちゃん、呪い殺されるよ」  里奈の光の灯らない2つの眼に見つめられて、ぞくっと悪寒が駆け上がってくる。 「お姉ちゃんもみんなと一緒になっちゃうよ」」  ぎゅっと握りしめられた手が、気持ち悪いほど冷たい。  その冷たさが、真綿に現実を思い出させる。  違う!  こんな場所じゃなかった。  あたし達が来たのはお化け屋敷だ。  真綿が、そう思い返した瞬間、光が消えた。 一瞬にして音楽が止まり、眩しかった辺りが暗闇へと急速に戻る。  後には静まり帰った静寂と、老朽化した屋敷だけが残された。
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