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森を抜けると、クロノスが静かに聳えていた。ナオキとシンが想像していたよりもはるかに大きく、近くで見ると圧倒されそうになる。だが、そんなクロノスも、モラトリアムという突然の現象のせいでやはり動いていなかった。
「クロノスの周囲 数十メートルにはバリアが張ってあって、鍵を使わないと解除できないそうです。内部に入るためにも鍵が必要で、どちらの鍵もクロアの代表者が代々 受け継いでいると聞きました。……資料によると、それ以外にはクロアの自衛軍がスペアをひとつ所持しているだけですね。」
ティーゼが資料を見ながら説明した。ナオキとシンは関心しながらクロノスを見上げている。
「たしか数カ月前、軍の持ってるスペアが消失したんだよな。なんとか代表者が持ってる鍵は残ってるけど、特殊な鍵だから簡単にスペアが作れない。」
同じくクロノスを見上げながら ジェノが言う。
「そうだよ。よく知ってるんだねぇ。えらいよ♪」
セリはジェノの頭をなでた。明らかにいじめて楽しんでいる。
「ちゃんと本部での会議には毎回出席してるんだから、知ってて当たり前だろっ!」
ジェノはセリの手を はらった。そんなことはお構いなしにセリは笑う。
「毎回 寝てるくせに?」
「うっ……。」
ナオキとティーゼとシンは そのやりとりを楽しそうに眺めている。
「やっぱ外部から見ても問題が無いって事は、内部に問題があるのか……。今日は一旦クロアに戻って、明日鍵を借りてからクロノスについて調べたほうがいいな。」
アークが言って、セリ達も同意した。
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