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ナオキが話し終えるまで、クローディアはずっと真剣な表情で黙って聞いていた。ときどきナオキが見せた自嘲の笑みには、悲しげな瞳をしながら。
「これを成し遂げるために、ひとつだけお願いがあるんです。」
「…………。」
「鍵を、貸してください。」
「っ!…… 本気なんですか?」
驚いて聞き返すと、ナオキはしっかりと頷いた。
「すべてを終わらせるためです。」
「でも、そのためにあなたは……。」
その先の言葉を、クローディアは言えなかった。言葉にしたくないと表情が言っている。そんな彼女を見てナオキは微笑んだ。
「俺がいた世界を守りたいんです。」
「……決心は揺るがないんですね。」
「はい。」
しばらく二人は見つめ合う。それはほんの数秒間だったが、何分間にも思えるような時間だった。
クローディアは長いため息をついたあと立ち上がり、机の引出しから鍵を取り出す。そしてナオキに渡した。
ナオキが礼を言おうとしたその際、手がギュッと包み込まれた。
「貴方がやろうとしていることをする前に、あの方々にはすべてを話してください。いいですね。」
「ありがとうございます。」
クローディアは一度 目を伏せて、それから真っ直ぐナオキを見る。
「やっぱりやめたって言って返しにきてもいいですから。……私は、それを願っています。」
「……ありがとう、ございます……。」
ナオキはそれ以上何も口にせず。ただ、静かに微笑んでいた。
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