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(でもどうやって飛べばいいんだろう……。魔力を下に噴射するとかで良いのかな?)
こんな事を考えているということはやはり、ホウキで飛ぶつもりだったようで……。
しかしこの男、飛び方もしらず挑戦しようとするとは驚きだ。
「……とりあえずやってみようか」
彼の思考の結果、魔力を全力で下に噴射するという結論に辿り着いたようだ。
太郎は視線を下に向け、マットを見た。
(ところで魔力ってどうやって出せばいいんだろう?)
不意にそんな疑問が沸く。
答えは分かる、が、解き方が分からない。
太郎にとって今の状況はそんな感じ。
(くっ! 魔力よ出ろ~!!
魔力よ出ろ~出ろ~出~ろ~!!)
とりあえず念じる。
何とかなると信じてひたすら。
しかしそんな太郎の願いは届かず、何も起こらなかった。
(駄目か……。やっぱりね、そんな気はしてたんだよ)
そんなことを考える。
諦めよう。
太郎がそう思ったときだった。
足下で小さな爆発音。
(ん?)
何の音だろう――太郎がそんなことを考えていると、太郎の足下が青く光り輝く。
そして、そのまま青い光の輝きは強くなり、太郎の体は宙に浮いた。
この青い光はきっと魔力なのだろう。どうやら太郎のひたすら念を送るという行為はそれなりに効果があったようだ。
「浮いたー!!」
が、しかしホウキはまだマットの上。
浮いているのは太郎だけである。
「な……んだ……と?」
この驚き方から見て、どうやら太郎は今気付いた様だ。
目の見開き方が異常。少し、怖い。
「何でホウキは浮かなかっ――」
太郎が次の言葉を口にしようとした瞬間、太郎の足下から出ていた魔力は一瞬で消え去る。
そしてそのまま太郎はマットの上に、落下――というよりこの場合は墜落に近いのかもしれないが。まあ、とにかく、落ちた。
それも凄い音をたてて。
その音の凄さは、マットの上で蹲る、太郎の表情で察していただきたい。
あまりの痛さに、声が出せないようだ。
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