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私は男の人が怖い。思い通りにならないと、すぐに暴力をふるから。
「ユキコ、イヤならイヤって言っちゃいなよ」
お昼休み、机を向かい合わせにしてお弁当を食べる。座ってお弁当の蓋をあけると、多恵は言った。
「そうだよ、あの人が来るとクラスの雰囲気悪くなるしさぁ」
由美もうんうんとうなずく。
「……うん」
もぐもぐとミートボールを食べながら曖昧に答える。
「「高瀬くんと別れなきゃよかったのに」」
忘れようと努力している名前を急に言われ、ビクッとしてしまい、箸を落とした。
カチャーンと、音が鳴る。
「大丈夫ー?」
「うん、ちょっと洗ってくる」
お弁当に蓋をして席を立ち、教室を後にする。私たちの教室は角部屋で、階段は近いが、トイレや水道は遠い。
「……」
ジャー
冷たい水。
冷たくなる手。
ぱぱっと水を払うと、箸を持ったまま屋上に向かった。
なぜか、高いところに行きたくなった。空に一歩でも近づきたかった。
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