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「……っ」
痛くて歯を食いしばる。
「林サン、屋上好きなの?」
三橋くんの目が、はっと鋭くなった。バッと高瀬くんの腕を私の肩から他愛もなくふりほどくと、ひょいと私を抱きかかえた。
「……え」
「軽いねー林サンは」
くるくる回る三橋くん。落とされたらどうしよう、とぎゅっと目をつむり、ワイシャツの胸元を握る。三橋くんは鼻歌を歌ってた。
「三橋!」
雷鳴。高瀬くんのイラだった声。それを飄々と交わしながら、三橋くんはわざとらしく言った。
「もうチャイムなってるよ」
「なっ」
高瀬くんは腕時計を見たのか、すごく悔しそうな舌打ちが聞こえる。
バタバタと痛い音が去っていく。
「……おろしてください」
私はすぐさま、朝よりは大きい声で言った。でも三橋くんは聞こえないふりをする。
「……おろして」
ぎゅぅう、ワイシャツを掴む力を強める。
「どうしようかな」
三橋くんの楽しそうな声。きっとからかわれてる。
「お願い、おろして」
キッと顔をあげて言う。
「お、おう」
びっくりしたのか、三橋くんはあっさりとおろしてくれた。
「ありがとうございます」
ぺこりとお礼を言って屋上を逃げるように後にした。
「おー早いな」
ふと、彼は足元に落ちている箸に気づいた。
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