こわいひと

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 おとなしくなった教室のうしろのドアをあける。ガラリ、みんなの視線が私に向く。 「林、早く席に着け」  先生の声に触発されて席へ向かう。昼休みから変わらず動いていない机。机の上のお弁当箱。ギッギと机を先生の方に向け、イスに座る。食べかけのお弁当をお弁当袋に入れて、左側の床にあるカバンの上に置く。 「では、――」  先生は授業を続ける。 ――きっと……怒ってる。  ぶるりと寒気がした。  手を握ったり、開いたりを数回して、引き出しから国語の教科書とノート、筆箱を出した。カチカチッとシャーペンを鳴らす。 「この【まつ】という語句には2つの意味が込められていて……」  カッカッと黒板が乱暴に白く染められていく。新しく長いチョークはボキッと折れた。 「ああ失礼」  先生は折れて落ちたチョークを拾いケースにしまう。そして何事もなく授業を進める。 「これは掛け言葉といって……」  【まつ】に松の木と待つの意味を含ませている。  ノートにカッカッと書く。下敷きに当たる音。  ふいに窓の外を見る。屋上でみた青とは、また違う青があった。
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