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「え、ええい!いつまで唖然としておる!焙烙火矢じゃ!焙烙火矢を投げよ!」
指揮官の叱咤で我に返った兵達は、一斉に焙烙火矢を投げた。
焙烙火矢とは、銅の球に火薬を詰め、布で包んだ上から漆を塗った物である。
これに火を付け敵の船に投げ付けると爆発し、たちまち軍船は炎上してしまう。
毛利が誇る、最強の兵器だった。
しかし、織田軍の鉄甲船の前には、玩具に過ぎなかった。
「ほ、焙烙火矢がきかない!」
「一体どうすればよいのじゃ!?」
兵達に動揺が走った。
「狼狽えるな!焙烙火矢が通じぬなら、乗り込むまでだ!我に続」
――ダァーン!
鉄砲の音が響いた。
それと同時に、指揮官は頭から鮮血を流しながら倒れた。
兵達は頭上を見て、凍り付いた。
鉄拵えの船体の小窓から、無数の鉄砲がこちらを向いていたのだから。
「放てぇ!」
鉄甲船の中から、号令が聞こえた。
そして毛利の侍達に、死の雨が降り注いだ。
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