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「いかん!鉄砲が来る!竹盾を持って来い!」
「あの船の二の舞になるなぁ!」
自分の周りで、他の侍達が大声を張り上げている。
自分は訳も分からず、組頭に指示された通りに、鉄砲を防ぐ竹を束ねた盾を運んでいる。
「おい!こっちにも竹盾を寄越せ!」
「しょ、承知!」
緊張で声が裏返ってしまった。
しかし、今はそんな些細な事は気にしていられなかった。
ここは戦場だ。
気を抜けば、一瞬で骸に成り果ててしまう修羅場なのだ。
「竹束、持って参りました!」
息を切らしながら、抱えていた竹束を差し出した。
しかし、なかなか受け取ってもらえない。
(……………………?)
どうしたのかと思い顔を上げると、組頭が青い顔をして海上を見つめている。
自分もその視線を追い、顔を向けた。
そこには織田軍の鉄甲船が浮かんでいる。
だが、ただ浮かんでいるのではなかった。
鉄拵えの船体に一際大きな扉があり、それが観音開きに開いていて、そこから何やら黒い物が顔を出していたのだ。
大砲だった。
そして、その砲門が向いている先は
―この船?
「に、逃げろぉぉ!!」
組頭が叫ぶのとほぼ同時に、耳を突き破らんばかりの轟音を発して大砲が火炎を吹き出した。
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