5人が本棚に入れています
本棚に追加
STLLBORN
あれから何年すぎたのだろう。
「パパ~!ママ~!どこにおにーちゃんいるかなぁ?」
よく晴れた日。今日は来希の誕生日で命日だ。
両親を振り返り、空に手を伸ばすのは来希の妹として生まれた子だ。
「あぁ、いるよ。お兄ちゃんはいつも側にいてくれる」
「すーちゃんもお兄ちゃんにたっくさんお話しようね」
「うん!すーかおはなしするよ」
来希が空へ帰って数年。
また私に宿ってくれた小さないのち。来希のようになってしまったらと、眠れぬ日が一体どのくらい続いたことだろう。
でも、この子は無事に生まれてくれた…今、お腹にいる子もきっと大丈夫。
「悟浄」
「なんだよ」
「来希の事は悲しかったけど…今とっても幸せ」
そういって愛娘の嵩歌を見て微笑む瞳を悟浄は優しく抱きしめる。
「来希は死んでない…俺らの中で生き続けている」
「そうね」
駆け寄って来た娘を抱きしめて悟浄は瞳と笑いあう。
そんな三人を包み込むように暖かな風が吹く。
来年の今頃には新しい家族が増えているだろう。
最初のコメントを投稿しよう!