世界で一番長い一秒

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せめてもの手向けに、なんて言葉を贈ったのが自分自身だというのもなかなか虚しいものだ、ということを今更知ってしまった。   どこに逃げ出したって影はついてくるというのに。   結局最後まで無力だったな…   そんなことをぐるぐると考えつつ、実穂(サネホ)は車を走らせていた…   そのうち、実穂を乗せた車が、海岸沿いの道路の路肩に停まった。   当然のように、中からは実穂が出てくる。   実穂はあたりをきょろきょろと見回し、海岸に降りる階段を見つけて、下に降りた。   燦々と照りつけている太陽は、季節外れの海水浴の来客者の影を長くさせていた。   しばらくの間、実穂は丁度良い岩板に座っていた。   目をつぶると、命の音が聴こえる…心臓の鼓動と波の寄せては返すリズムはきっとリンクしているんではなかろうか?   誰かが実穂の肩に触れた。実穂は待ってましたとばかりに満面の笑顔で振り返った。   「ごめん…遅れた」   「ううん。」   実穂は立ち上がろうとして、意識が飛ぶのに抵抗できなかった。光が遠くなって…
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