2857人が本棚に入れています
本棚に追加
五分後。
「ええと…つまりあなたは母の古くからの知り合いの黒崎綾音(クロサキアヤネ)さん。
それで生前、母に俺の事を頼まれた…ってことですか?」
俺は今までの会話をまとめてみる。
「そうよ。正確には私の恩人なんだけど…」
恩人…。
「だから私は彼女の頼みを聞きたいのよ」
「…でも俺は『呪われた子』って呼ばれてて、俺に関わったら死んでしまいますよ?それで母も死んだわけですし…」
俺は少し自嘲気味にそう言った。
黒崎さんの好意は素直に嬉しいし、こんな美人さんと同棲なんて…グヘへ。
夢が膨らみます。
…でも、俺に関わればこの人も。
「そんなの気にしないわよ?死んだ時が私の命日ってだけ。
それに、あなたのお母さんは最後まであなたの心配をしていたのよ?
『もし私が死んだら…あの子は独りになってしまう』ってね」
「……母が……」
俺はそうとしか言えなかった。
俺は生きていれば他人に迷惑をかける。
でも…母は…。
…わからない。
俺はどうすれば…。
「決まってないならさ、」
黒崎さんがしばらく無言だった俺に話しかける。
「試しに私の家に来ない?」
…
「…っ…でも、お金がかかりますし…」
「お金は心配ないわ。私は小さいけれど会社を持ってるのよ」
黒崎さんがなんともないように言う。
ん?
会社を持ってる…ってことは………!?
「社長さんなんですか!?」
びっくりし過ぎて声が裏返ってしまった。
まさか俺の人生で『社長』という役職の人と会話する時が来るとは思ってもみなかった。
「そうよ…だからお金は大丈夫。
ほらっ、はやく行きましょう?」
黒崎さんはそう言って俺に右手を差し出した。
一瞬躊躇った後、俺は黒崎さんの手を取った。
顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
「よろしくお願いします!!」
俺は黒崎さんにそう言っていた。
最初のコメントを投稿しよう!