プロローグ

4/4
前へ
/285ページ
次へ
五分後。 「ええと…つまりあなたは母の古くからの知り合いの黒崎綾音(クロサキアヤネ)さん。 それで生前、母に俺の事を頼まれた…ってことですか?」 俺は今までの会話をまとめてみる。 「そうよ。正確には私の恩人なんだけど…」 恩人…。 「だから私は彼女の頼みを聞きたいのよ」 「…でも俺は『呪われた子』って呼ばれてて、俺に関わったら死んでしまいますよ?それで母も死んだわけですし…」 俺は少し自嘲気味にそう言った。 黒崎さんの好意は素直に嬉しいし、こんな美人さんと同棲なんて…グヘへ。 夢が膨らみます。 …でも、俺に関わればこの人も。 「そんなの気にしないわよ?死んだ時が私の命日ってだけ。 それに、あなたのお母さんは最後まであなたの心配をしていたのよ? 『もし私が死んだら…あの子は独りになってしまう』ってね」 「……母が……」 俺はそうとしか言えなかった。 俺は生きていれば他人に迷惑をかける。 でも…母は…。 …わからない。 俺はどうすれば…。 「決まってないならさ、」 黒崎さんがしばらく無言だった俺に話しかける。 「試しに私の家に来ない?」 … 「…っ…でも、お金がかかりますし…」 「お金は心配ないわ。私は小さいけれど会社を持ってるのよ」 黒崎さんがなんともないように言う。 ん? 会社を持ってる…ってことは………!? 「社長さんなんですか!?」 びっくりし過ぎて声が裏返ってしまった。 まさか俺の人生で『社長』という役職の人と会話する時が来るとは思ってもみなかった。 「そうよ…だからお金は大丈夫。 ほらっ、はやく行きましょう?」 黒崎さんはそう言って俺に右手を差し出した。 一瞬躊躇った後、俺は黒崎さんの手を取った。 顔が赤くなっているのが自分でもわかる。 「よろしくお願いします!!」 俺は黒崎さんにそう言っていた。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2857人が本棚に入れています
本棚に追加