シロイツキ

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そういえば最近、別の人にも何を聴いているのかと訊ねられたのを思い出した。 放課後に、図書室へ行った時だ。 その日はブルーハーツを聴いていて、彼女がブルーハーツを知っていることに、少し驚いたものだった。 そして何よりも、剛志以外の人に『何を聴いているのか』と訊ねられたことに驚いた。 僕の学校生活で起きた、数少ない変化はこのことだけだろう。 毎日、聴いている音楽が変わろうと、基本は変わらないのだ。 学校へ行き、席に座り、授業を受け、そして帰宅する。 それ以外、ほとんど何もしていないと思う。 きっとそのせいだろう。 僕はクラスで浮いている。 浮く。というのは、擬態がうまくできないということだ。 周りの環境にあわせられない、擬態が下手な弱者はすぐに淘汰される。 色が変えられないカメレオンは餓えるし、木の枝に見えないナナフシは直ぐに鳥に食べられてしまう。 それは自然界だけのことではなく、ヒトの社会も同じだ。 擬態が出来ない者を、ヒトは避け、無意識の内に排斥しようとする。 この気持ちを解る人物は、何人もいないのではないか。 大多数の者は、周りに上手く合わせられるし、要領よく返事もできるし、愛想笑いを作るのが上手い。 僕は上手い具合に周りに合わせてやっていけない。 あまり得意ではないのだ。 もしかしたら彼女なら解るかもしれない。直感的にそう思った。 人との数多の出会いの中で、たまにそういうことはないだろうか。 波長がぴったりと合うような感覚だ。 二言三言の言葉を交わしただけで、その人物の内側が、朧気に感じとれる。 どこか自分に似ている所があるのかもしれない。 それがどの部分なのか、僕は気になっていた。
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