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酒も美味しかったし、料理も美味しかった。
僕達はとても盛り上がった。
僕はビールと2杯のチューハイを呑んだだけで、もう酔いが回ってきている。
もうそろそろ止めないと、僕は帰れなくなってしまうだろう。
「情けないなあ、晴彦。
もう顔が赤いじゃない」
小夜はビールを2杯、チューハイを4杯。僕よりも多く呑んでいるのに、全然平気そうで、背筋がピンと伸びている。
「昔から酒には弱かったからさ、遺伝だよ遺伝。
ウチの家系は皆、酒が弱いし」
「やっぱり遺伝するものなのかな。
私の両親はお酒に強いもん」
それからも二人の会話が途切れることはなくて、学生時代の話なんかをしていた。
小夜が中学、高校とバレーボール部だったという話は意外で、面白かった。
なんだか小夜に運動部は似合わないイメージがあったからだろう。
「晴彦の高校時代はどうだったの?
彼女とかいた?」
小夜が何とはなしに言った言葉が僕の耳の奥で揺れた。
その途端、僕の首筋を生暖かい、湿った風が撫でた気がした。
この席は出入口から離れている為、扉が開いたからといって風が入ってくることはないのに。
隣の席の人達があげる笑い声も聞こえなくなって、光香の髪の匂いが、声が鮮明に僕の中で蘇ってきた。
「晴彦、どうしたの?」
小夜の声が僕を記憶の流れの中から呼び戻した。
溢れだしたものが、ふっと消えていく。
「ん、ああ、ごめん。
寂しい高校時代でさ、あんまり良い思い出なくて」
何かを振り払うために、僕は冗談混じりに言う。
その何かは、僕の胸の奥の方をしっかりと、痛いくらいに掴んでいて離そうとはしなかった。
「それは嘘でしょ?
さては晴彦、高校時代は遊び人だったとか?」
これは嘘をついたことになるのだろうか。
少し違う気がする。
「いや、本当にモテなかったよ、ネクラだったし。
毎日イヤホン耳にして音楽ばっかり聴いてたから」
これだって別に嘘ではない。
光香に出逢うまでの僕は実際にネクラだった。
友達は今でも少ないかもしれない。
「意外だな。
今の晴彦じゃ考えられない。
ねぇねぇ、どんな学校生活だった?」
小夜はほろ酔い気味に、僕に詰め寄った。
僕の学生時代に興味を持ったみたいだ。
「別に面白い話もないよ?」
「いいから、聞かせてよ」
隣の席の人達が大きな声で笑っていた。
小夜の眠そうな印象をうける、潤んだ瞳が僕を真っ直ぐに捉えていた。
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