5人が本棚に入れています
本棚に追加
シロイツキ
その昔、僕らが生まれてくる前のこと。
ヒトという種の夢が、重力の鎖を断ち切り、星の大海へと飛んだ。
無限へと続く漆黒。
星達が爛々と、墜ちてくるような光を放つ海。
その時、初めて地球という揺り籠から外に出た男はこう言ったそうだ。
地球は青かった。
しかし、どこを探しても神はいなかった。
それは、彼女が教えてくれた言葉だ。
あの頃の僕には、他のどんな聖人君子が言った言葉よりも、価値があるように聴こえた。
世界中に溢れている、どんな教えを説く言葉より、ただ、彼女が教えてくれる言葉だけで、僕には十分だった。
そう、手の中に握られているモノが、硝子玉だろうと宝石だろうと、どうだってよかったんだ。
ポケットの中に隠していた、穴が空くほどに詰め込んでいたモノが、なんであろうと、僕らには関係なかった。
あの頃の僕は、確かにそう思っていた。
あの頃の僕らは、確かにそう感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!