面影

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      海斗 「…お前かよ」     軽くため息をつくと、再びパソコンに目を向けた。     さつき 「イライラして、青木くんらしくないぞ」   海斗 「うるせ。邪魔すんなよ」     軽く舌打ちをすると、再び書類に目を通した。       さつき 「…ていうかさ、これ別に営業の青木くんがやらなくても、内勤に頼めばいいのに。」   後ろから話しかけるさつきの方は見ず、パソコンに目を向けた。     海斗 「…まぁな。でも、俺まだ下っぱだしよ」     さつきはフッと笑うと、俺の横の席に腰かけた。     さつき 「意外と真面目なんだね、青木くん。」   海斗 「意外とは余計だ」     そう言ったかと思うと、俺の手から書類を取り上げたさつき。         海斗 「おい」   さつき 「私も内勤なんだけど」   海斗 「は?」     書類を取り返そうと手を伸ばすと、さつきはすかさず書類を上に上げた。       さつき 「今日予定あるんでしょ?」   海斗 「………」   さつき 「朝からずっとソワソワしてるし」   海斗 「…別に」     うつむき加減の俺の顔を見つめ、さつきは椅子を立った。       さつき 「仕方ないなぁ。今日は私が残業して書類作っておくから。」     俺は、静かにパソコンの電源を落とした。       海斗 「…悪い」   さつき 「今度何かおごってね」   海斗 「…気が向いたらな」     軽く笑みを浮かべると、鞄を手にし、足早に会社を出た。    
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