序章

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───時は近未来。 人類は「恐怖の均衡」からの脱却を目指し軍備、兵器の縮小、廃絶を進めた結果、地球上から「兵器」という機械は消え去った。 しかし、「争い」は消え失せてはいない。 高度に発達した情報技術による「電脳戦争」(サイバー・ウォー)。 未だ残る先進国と発展途上国の南北格差。 日本で新たに発見された石油に代わる鉱物資源「イデア・ダイト」の争奪。 国際連合は複雑に入り乱れる諸問題を解決すべく、打開案を打ち出した。 「CRIMSON提案」───本来、非合法の賭博試合である人対人の武闘「CRIMSON」を合法化し、国際的基準を設ける。 この提案はある条件を付与することで総会を通過した。 「勝利者の絶対優越原則」 「CRIMSON」の勝利者は敗北者に対して絶対的優越を持つという文字通りの原則。 この原則を「CRIMSON・IN」(クリムゾン・インターナショナル)つまり、国同士の代表者による「CRIMSON」にも適用することを条件とした。 勝利者所属国はある程度の規制はかけられるが、外交的にかなりの優越を得るということだ。 無論、これは「争い」である。問題を一括化したに過ぎない。 しかし、この提案が総会で採択されたことで、世界各国は目の色を変えて十年後に施行される「CRIMSON条約」に向け選手育成に着手した。 「イデア・ダイト」保有国の日本とて例外ではない。 敗北は貴重な鉱物資源の大量流出を意味するからだ。 政府当局は選手育成に向け国立の養成所を創設。日本全国からは勿論、世界各地から武術留学生を招いた。 国立学園都市「慶劉学園」。 そこは「力」こそ全てである。 そこはいかなる者も受け入れる。 そこは…… 「兵」(つわもの)が集う。
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