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別館校舎、報道部――――。
新聞、小冊子、イベントなどの取材、他にも手広く活動をしている。高等部にだけある部だった。
「あらら、王子の大事なウサギちゃん。迷路に迷い込んでるよー。迎えに行っておいで」
窓辺に寄り掛かって、外を眺めていた報道部副部長、三年特別Sクラスの、松本順(まつもと じゅん)が、大きな声をあげた。
「は?安倍が!?まさか?あいつは持上がり組ですよ。庭園には迷路があることを知ってます」
アンケートの集計をしていた、学年代表生徒で、二年Aクラスの佐野圭斗(さのけいと)は、有り得ないだろと思いつつも、迷路を見に窓辺にやって来た。
「嘘だろ!?」
「な?間違ないだろ。髪を両サイド耳の上で結んでるもん。さあ、早く救出してあげなよ、王子」
松本は肩を揺らして笑っている。
「何が王子ですか!あの、バカ娘!方向オンチのくせに!何、迷路に入ってんだよ。また、迷惑掛けさせる気かよ」
「じゃあ、俺が行っちゃうよ?いいの?俺がウサギちゃんの、ナイトになっちゃおっかなぁ」
松本にニヤニヤして言われ、佐野はキッと睨み付けた後、部室を後にした。
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