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生者の世界と死者の世界の間には、狭間の世界という小さな世界があった。
薄暗く、それでいて明るく、雨も降らず、また晴れ渡ることもない。
そんな世界だった。
その狭間の世界には、大きな大きな竹林と美しい白い川と、古びた家が一軒だけあった。
大きな竹林は生者の世界につながり、白く美しい川は死者の世界につながっていた。
そして、一軒家には、たった二人のひとしか住んでいなかった。
その二人の役目は、死者の世界に行けなかった死者を斬ること。
すると、死者は白い川を渡れるようになり、死者の世界へ行くことができた。
しかし、夜な夜な人を斬らねばならない二人は、決して幸せではなかった。
でも、二人は、この世界が好きだった。
この世界には何も無かったからだ。
悲しいことも辛いことも。
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