ある少女の話

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   竹下奈美が交通事故で重体らしい。  その噂は、クラスメイト達に、たいした衝撃を与えなかった。  翌日、担任教師がそれを告げても、それは変わらなかった。  女子の何名かは、涙ぐんだり、青くなったりしたが、それは、身近な人物が重体であるという事実に対するものであり、実際のところ、彼女らは竹下奈美について哀しんだわけでも何でもなかった。  この女子生徒に限ることではない。  竹下奈美と親しい者など、どこにもいなかった。 他クラスに及べば、その存在を知る者さえ少ないであろう。  友人付き合いをする者も僅かながらにいたが、それも、その他大勢の中の一人、という程度で、たいした付き合いではない。  いったいに、竹下奈美という人物は、寡黙でクラスと馴染まず、教師には、『居ても居なくても同じような子』と評されていた。  そして今、竹下奈美は 孤独に生死をさ迷っている。  
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