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幾つかの春が過ぎ、花の香りが鼻を擽る。
幾つかの夏が過ぎ、太陽の光は彼の銀の鱗を輝かせた。
幾つかの秋が過ぎ、鳥達が彩られた木々の中にさえずるのを聞いた。
幾つかの冬……。風の音だけが、彼の話相手だった。
フーッと溜め息をつくと、彼の口からキラキラと白い氷の粒が吹き出して、森の一面を白く染めた。
鱗は銀に輝く鎧のよう。金の大きな翼は少し羽ばたくと、遥か遠くの木々の葉までもざわつかせることはできたが、彼はまだまだ若いドラゴンだった。
彼は背伸びをして、もう少し強く羽ばたいた。体から重さが無くなると後ろ足を蹴り上げて、爪先の爪が地面から離れるのを感じた。
次の瞬間には空高く飛び上がり、風とひとつになっていた。
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