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「……さん……ドラゴンさん。」
消え入りそうな声?ドラゴンは、だるそうに片目をあけた。
目の前にいたのは……。妖精よりも遥かに大きく、人間の男達と比べれば小さなものだ。
「あの……こんにちは。」
おずおずと……小さなものは丁寧に頭を下げ、薄紅のかわいい刺繍の付いたマントから何かをゴソゴソと取り出した。
「あの……わたし……お願いがあって、ここに来ました。
……妖精さんに頼まれて……一緒に……。」
声は掠れてとても聞き取りにくいが、崖下で骸になっている強者どもよりは、よっぽどちゃんと話している。
小さなものはドラゴンに臆し、足も肩もガタガタと震えてはいるが、片方だけ開いた彼の目を真っ直ぐ見つめている。
「闇の王が、妖精の国を漆黒の闇の沼に沈めようとしています。
……大地も河も……全てが漆黒の闇に飲まれることになってしま……す。
私は、妖精王オーベロンの命を受け、参上いたしました。」
小さなものは、もう震えてはいなかった。頭をしゃんと上げると、その小さな手の平いっぱいの琥珀の玉を頭上へと掲げた。
そして、誰かが乗り移ったかのように語りはじめた。
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