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【１】帰郷
私の名前は、片岡美紗といいます。
四国の山の中、ちょうど高知県と愛媛県の県境辺りに、私の生まれた家はあります。
高知市内から松山を結ぶ国道を、一時間ほど山へと入ったところに小さな町のバス停があり、そこから長い坂道を登って林道へ出ると、緑に囲まれた場所に、今も小さな谷が流れています。
夏の暑い日は、いつもこの水を手ですくって飲み、一息ついたものでした。
生き返った気持ちで、木々の隙間から見上げた青い空、幾重にも重なった蝉時雨が今でも懐かしく想い出されます。
そうして、林道を15分ほど歩くと、最後の細い坂道。
そこを上り切ったところに、大きな楠（くすのき）があり、右に曲がったところが、私の家です。
家の鍵はいつも玄関横の郵便受の裏にあります。
私は、そこで中学まで母に育てられました。
あなたは、きっと………
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