【4】桜の坂道で・・・

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しばらくして、フィルムが残り少なくなった頃。 美紗は父と母を見ていた。 桜の下で凛と立つ母は、とても綺麗であった。 父のカメラの中で、母が笑ってくれることを心から願っていた。 『良介君、車に戻ろう。カッコイイとこを撮ってあげる。お父さん、車の鍵を貸して。』 そうして、二人は先に車へと戻って行った。 手つないだ父と母が戻ろうとした時、美紗は助手席でカメラを構えていた。 『ちゃんとハンドル握って!運転してる様なカッコつけてよ。』 良介は、のせられ易い性質である。 ハンドルを握り、見よう見まねで・・・サイドブレーキに手をかけた。 もともと軽くかけてあったサイドブレーキは外れ、車はゆっくりと、坂道を下り始めた。 『美紗!!』 保彦が多恵の手を放して駆けて行く。 尋常でない突然の大声と、振りほどかれた手に、多恵は分けもわからず、その場に座りこんだ。 ほんの数秒のことであった。 懸命に走る保彦の先で、二人の乗った車は、対向車線を越えた。 『美紗ちゃん!!』 良介が叫んだ瞬間、車は反対側の道路脇にある桜の木にぶつかって止まった。 無数の花びらが舞い散る。 車に辿りついた保彦が助手席の窓から覗き込む。 『大丈夫か?怪我はないか?』 『お・・・お父さん・・・。私は大丈夫。』 美紗をかばう様にして、良介の体がかぶさっていた。 『良介君、大丈夫か?』 『わっ!』 慌てて美紗からはなれる良介。 『だ、大丈夫じゃき。ご、ごめんなさい。』 『ええから、痛いところはない?ちょっと待っちょれ。』 保彦は運転席側へと回り、ドアを空け、良介の様子を伺う。
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