【12】再会

2/3

136人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
病院へ運ばれた時の美紗は完全に意識がなく重態であった。 懸命の救命処置が何時間も行われ、その結果、何とか一命を取り留めたのである。 そして、3日間眠り続けた後、目を覚ました。 (ここは?私はいったい・・・) 『美紗ちゃん。美紗ちゃん。』 ぼんやりとした視界の中に、一人の影が、次第に鮮明に現れて来た。 『・・・良介・・・君?』 ゆっくり起き上がる美紗。 『美紗ちゃん!!良かった!良かった!』 良介は、握っていた美紗の手を額にあてて、涙をこぼしていた。 美紗が帰ってきた夜。 良介は、役場の仕事帰りに、誰もいないはずの家に明かりが点いていることに気付いた。 美紗が帰って来た! 無我夢中でその明かりへと走った。 そこで、床に崩れ落ちた彼女と再会したのである。 この3日間、彼は仕事を休み、彼女の手を、ずっと握り続けていたのであった。 『良介君。あなたが助けてくれたの。何で助けたの・・・何で、死なせてくれなかったの・・・私は、お母さんのところへ行きたかったのに。』 「パン!!」 良介の平手が、美紗の頬を打った。 『バカやろう!! 死んじゃあいかんぜよ! お母さんはそんなことを望みゃあせん!』 美紗は、言葉を失って、かつての恋人の顔を見つめた。 良介は、美紗を抱きしめた。 『死んじゃあいかん。・・・死なせたりせん! 僕が、美紗ちゃんを守る! もう、絶対に放さん! もう、どこっちゃあ行くな!』 頬が、ジンジンと痛んだ。 それよりも、胸の痛みの方が大きかった。 その痛みは、悲しみや苦しみとは違って、美紗に大きな安堵を感じさせていた。 美紗も、良介を抱きしめていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加