【13】帰郷~絆~

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~東京~ 5日前。 美紗の娘である彼女は、東京で芸能関係の仕事をしていた。 ある日、その会社の社長宛に小包が送られて来たのである。 差出人は、山口良介。 添えられていた手紙を読んだ。 「はじめまして。私は、あなたのお母さんと共に生きてきた者です。」 彼女の胸が、『ズキン!』と響いた。 (私の…お母さん?) 良介と美紗は、互いに深く愛し合ってはいたが、結婚はしなかった。 美紗は、我が子の父である片岡修二を、忘れなかったのである。 「残念ながら、彼女はもうこの世にはいません。先日、病気で逝ってしまいました。あなたの事を、いつも、そして最後まで想っていました。これは、自分が死んだら、あなたに送る様にと言っていたものです。『かたみ』として貰ってあげてください。」 彼女は、小包を開けた。 それは、母、美紗のカメラであった。 傷だらけではあったが、隅々まで手入れされていた。 彼女はそのカメラに、何とも言えない愛情を感じた。 分けも分からず涙が流れた。 箱の中には、もうひとつ手紙があった。 「私の名前は、片岡美紗といいます。 四国の山の中、ちょうど高知県と愛媛県の県境辺りに、私の生まれた家はあります………………家の鍵はいつも玄関横の郵便受の裏にあります。 私は、そこで中学まで母に育てられました。 あなたは、きっと私の事を恨んでいることでしょう。 私は赤ん坊のあなたを捨ててしまいました。 ひどい母親です。 こうして、生きていることが恥ずかしくも思います。 でも、私は一度死んで、ある人に助けられたのです。 生きて二度とあなたに会うことはありません。 私には、そんな資格はないのです。」 彼女は涙で文字が見えなくなりながらも、ゆっくり、弱々しい一文字一文字を読んだ。
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