【13】帰郷~絆~

3/3
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「あなたのことは、テレビで知りました。 何気なく見ていたテレビに、真っ黒で、真っ直ぐな瞳を見つけてしまったのです。 あなたの目は、あなたの父親とそっくりでした。 そして、手の甲にあるアザを見た時に、私の子だと確信したのです。」 彼女は自分の手の甲を見た。 ハート型のアザ。 彼女は、そのアザが気に入っていた。 そして、仕事でテレビに出た時は、わざとカメラに映る様にしていたのである。 (母が生きていたら、このアザに気が付いてくれるかも知れない。) そう願っていた。 「それから、ずっとあなたの事を見守っていました。 あなたに許して貰えるとは思いません。 ただ、私とあなたの父は、本当にあなたを愛していました。 それだけは信じて欲しくて、この手紙をしたためました。 雪の日に、最後に抱いたあなたの温もりは、一生忘れません。」 胸の中で、繰り返し問いかけてきた答えが、今、はっきり分かった。 (私は…愛されていた。) (邪魔で捨てられたんじゃなくて、愛されて捨てられたんだ。) (私は、母の胸に抱き締められていたんだ。) それで十分であった。 「このカメラは、私の父、あなたの祖父から貰ったものです。悲しい別れもありましたが、このカメラは、私と私の母を繋ぎ止めていてくれました。 あなたに持っていて欲しいのです。 私たちの絆の証として…」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!