【14】エピローグ

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3月の高知は、もうすっかり春であった。 楠(くすのき)の前で、彼女は一度だけ振り返り、携帯で家の写真を撮った。 『ねぇ。良介…さん。お母さんや、おばあちゃんのことをもっと聞かせて。』 良介が笑顔でうなずく。 その時、彼女の携帯が鳴った。 『げっ!ボスだ!』 良介に冗談っぽくイヤな顔を見せて、彼女は電話に出る。 『もしも~し。』 『元気そうね、芽衣(メイ)。キレて大切な家をぶっこわしてる頃かと思ってね~。』 『し・ま・せ・ん~! 全くもう…。今、感傷に浸っていい気分だったのにィ。ラブったら。』 トーイ・ラブ。 彼女の勤め先の、女社長である。 芽衣は12で孤児院を飛び出した。 そうして、街をさまよっているところを、関東で一、二位を争う女暴走族に拾われた。 気の強い(喧嘩も強い)彼女は、終いにはその族を引き継いだのであった。 その後、大きな抗争に巻き込まれた彼女は、ラブに助けられ、今ではラブの元で働いているのである。 『それはそれは。でも良かったわ。あなたがいないと、仕事の整理がつかなくて!行けと言っときながら悪いけど、出来るだけ早く帰ってきてくれたりすると、すっごく助かるかも…。』 『はいはい。では明日の朝の飛行機で戻るわ。あっ…それから…。ラブ…ありがとうございました。』 『メイ!お願いだから、ございましたなんて言わないで!雪でも降ったら、そんな山奥から帰って来れなくなるじゃない。』 ラブは電話を切った。 (ほんとに、良かったね、メイ。) その夜は、良介の家で大騒ぎの宴会が催された。 メイの酒ぐせの悪さを、良介は知るはずもない。 壁に並んだ三枚の写真。 赤ん坊の『芽衣』。 中学生の『美紗』。 母親の『多恵』。 親子三代の絆を物語るその壁は、その先もずっとそこで、時の流れを見つめ続けたのであった。 ~永遠の絆~ 完。 5cf4e7af-143f-4a25-8a11-c7c74eeae404 イラスト:r_art15さん。 https://www.instagram.com/r_art15?igsh=bXdlbTRkeWRtNGoy
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