2:Make-up Shadow

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「なら私の仕事は無いわね…買い物でも行こうかな」 「あ、お供します」 メルティのふとした発言に、ティルスは即座に反応した。メルティはそれを聞くと、顔をニンマリと歪めてティルスの方を向いた。 「何?デートの誘い?」 「ち、違いますよ!」 メルティの悪戯っぽい言葉を受け、ティルスはあからさまに動揺した。当然の如く彼は反論したが、僅かに赤く染まった頬が、まんざらでもない様子を強調していた。 「ふふ、私の目には全てお見通しよ?」 彼女は右目を見開きつつ言った。 一見、只の比喩や誇張表現とも取れるが、その発言はある意味真実を突いていた。 彼女の右の瞳は、僅かに赤く輝いていた。明らかに自然ではないと分かるそれは、彼女がかつて受けた『手術』によるものであり、通常より高い視力や、カウンター的な機能も有している。彼女はそれを敢えて、冗談の種に使っていた。 「……酷いです……」 項垂れつつティルスは返し、メルティはクスクスとした微笑みを浮かべた。 「あら?お二人共、どうされたんです?」 そこに、突然女性の声が響いてきた。一方は笑顔で、一方は赤らめた顔で声の方を向いた。 「ああ、ルーシー。実はティルスがデートの申し込みを……」 「ちょっと!誤解ですよ!」 「へぇー、結構積極的なんですねぇ」 メルティは相変わらずからかうように言い、長い金髪をストレートに伸ばした若い女性、ルーシーもそれに便乗した。 「それはそうとルーシー、今日は何時間寝たの?」 「そうですねぇ…10時間ですか?まだ眠いんですけふぉにぇえ」 メルティの問いに、ルーシーはだらしなく欠伸をしつつ答えた。心無しか、その姿勢もふらふらとして見える。 「あんたも大変ね。ま、また連絡があれば」 メルティは呆れながらも、手を振りつつ言った。 「ひゃい……ティルスさんも頑張って下さいね」 ルーシーもまた手を振り、相変わらず眠そうに通路を反対方向に歩いていった。 「だから違います!……あれで対外交渉人なんだからな…天賦の才って分からないよな……」 ティルスは断固として反論し、呟きつつ、メルティに随行していった。 ───── 「ねえねえティルス、これなんかどう?」 「は、はあ……可愛いと思いますよ」 今となっては希な、汚染の殆ど無い都市『バイオス』のショッピングモールに、仲の良さげな男女が居た。
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